2022年8月23日火曜日

偏愛メモ 『現代文明を考える』

第二章 道具と目的 P54-88


P55その寓話はプロメテウスの神話といわれ、人間とは道具を使用する動物のことで、プロメテウスが神々から盗んだ火という贈物を人間発展の第一の源とする仮定から始まっています。

P56私はこの見解に抗って、あるいはこの見解の補足として、プロメテウスではなくオルフェウスこそが人間の最初の教師、恩人であったということを信ずるに足る根拠を示そうとしたのです。

すなわち、人間は火を下僕としたからではなく、象徴の力をかりて友情と愛情を表現し、過去の生々しい思い出と未来に対する造形衝動をもって現在の生活を豊かにし、価値もあり意義もある生活をはじめられるきっかけを拡げ強める、それらの可能性を見出したからこそ、人間は人間らしくなったのだと言いたい。

こうしてアキレスの力やオデュッセイアの狡智は、ホメロスの心のなかの表現を通じて、永続する影響を他の人びとに与えたのです。もしそうでなかったら、こうした英雄がたとえどれほど戦争や競技や操船技術を巧みであったにせよ、その影響は、かれの短い生涯とともに消えてなくなっていたでしょう。

人間とは、道具の作り手である以前に、まずイメージをつくる者であり、言葉をつくる者であり、いわば夢想家であり芸術家であったでしょう。とにかく人間のより優秀なはたらきを示すものは、歴史の大部分を通じて、道具ではなく表象だったのです。

この二つの天賦の才が必然的に関連しあって発達したことは疑う余地がありません。なぜなら芸術がそれ自体がすばらしい運動刺激の調整と筋肉反応に依存しており、その表現のために身体の内外を問わずある種の道具を必要としているからです。

けれども、P57これが真実であるにしても、オルフェウスはプロメテウスと同じ高さの地位におかれなければなりません。

なぜなら冥王プルートーンの技術の冥界からエウリュディケを救いだした竪琴の奏手オルフェウスは、プロメテウスが人間を愛していながらも、ついに十分発展させえなかった人間本性のある部分を、代表しているからです(『サメ~愛の黙示録~』05話43:35過ぎ、tw,tw)。
(略)
P58/ 60/ 62/ 64
(略)
P72
P73しかし、ここで注意すべきことは、私たちは退屈な繰り返しの仕事すべてを見くびりがちなものですが、もっとも自由な職人でさえ、たとえ理想的な条件の下で働いているにしろ、仕事を強制されているのだという点です(tw)。

じっさい、芸術における創造の契機を強調しすぎること、たとえば美の創造を、厳しくつらい艱苦や努力もいらず、技術のたゆまぬ習熟もいらない、ただひとつ熱情的で自発的な活動を長く続けることだと思いたがるのは、明らかにその人が素人で、部外者であることを示す特徴のひとつです。
(略)
74 関連
・『はるか昔の夢の時に』(参照)
関連ツイート(tw1tw2tw3