『悪と徳と 岸信介と未完の日本』(相互参照)
岸はそのおかげもあって、首尾よく岡山中学に入学するが、在学期間は一年あまりにすぎない。というのも、松介叔父が肺炎で急逝したために、茂世の妹さわの夫である吉田祥朔が勤める山口中学に転校させられたのである。
信介の学業が遅れないようにと、その出発はきわめて急なもので、恩人たる叔父の葬式に出ることも許されず、山口に出発させられた。このように書いていると、中学時代の信介の生活が、余裕のない、受験勉強一色のように思われるかもしれないが、叔父たちの薫陶は、かなり幅広いものだった。
P37松介は、信介が中学に入学すると、イギリス人の家庭教師を雇って英会話を叩き込んだのみならず、テニスや野球などのスポーツをやるように勧めた。岸の身体が弱いことを心配してのことである。
さらに釣りの手ほどきまでえもしている。山口の祥朔叔父は、岸に漢詩をはじめとする、文系方面の薫陶を与えている。岸のキャラクターということを考えた場合、この一族の結束の下に教育を受けたという経験は、かなり決定的なものだったように思われる。
『閨閥 改訂新版 特権階級の盛衰の系譜』(P137)
『父吉田茂』(P178-)