P011目次/ 013/ 015/ 017/ 019/ 021/ 023/ 025
P027凡例、オリュンポスの神々
P029序文/ 031/ 033/ 035
(略)P045(略)
9 ニオベー
ニュクテウスの娘アンティオペーとゼウスとの息子たちである、アンピーオーンとゼートスは、アポローンの命令で、セメレーの墓も含めて(1)、テーバイ(ボイオーティア地方の首府)を壁でかこみ(2)、ラブダコス王の息子ラーイオス(オイディプースの父)を追放し、彼ら自身がこの地を支配しはじめた。
アンピーオーンは、タンタロスとディーオーネーの娘ニオベーを妻に迎え、七人の息子および同数の娘を彼女との間にもうけた(3)。この子供たちをニオベーはレートーに誇示し、アポローンとアルテミス(二人ともレートーの子供)に対して、アルテミスは男のように衣服をたくしあげて着用し、アポローンは服が垂れ下がり髪は長すぎるといい、息子の数では自分がレートーにまさっていると、ひどく傲慢に話した。
そのためアポローンは、彼女の息子らが森で狩猟しているときに矢で射殺し、アルテミスは王宮で娘らを、クローロスを除いて(4)、矢で射殺した。だが子供たちを奪われた母親は
P046 泣きながらシピュロス山(5)で石に変えられと伝えられ、今でも彼女の涙が流れているといわれている(6)。さらにアンピーオーンはアポローンの神殿を攻略しようとして、アポローンに矢で殺された。
注(1)ボリオのテキストにもグラントの訳文にもなく、マーシャルのテキストにのみみられる句。10 クローリス(略)
(2)アンピーオーンがテーバイを石でかこんだことは69話でもみられる。
(3)アポロドーロス(三・五・六相互参照)は男女七人ずつの名前を挙げ、同時の他の作家たち、すなわちヘーシオドス(十男十女)、ヘーロドトス(二男三女)、ホメーロス(六男六女)の各説を紹介している。
(4)『イリアス』ではすべての子供が射殺されたといわれている(二四・六〇二~六〇九)
(5)小アジアのリューディア地方にある山で、彼女の父タンタロスが支配していた。
(6)クイントゥス、一・二九四~三〇六、アポロドーロス、三・五・六相互参照
P047(略、ニオベーの子供たち、ペリアース)
P079
(略)29 アルクメーネー(系図wiki)
アンピトリュオーン(1)がオイカリア(2)で闘うために不在だったとき、アルクメーネーはゼウスを自分の夫であると誤解し、彼を寝室に迎え入れた。ゼウスが寝室を訪れ、オイカリアで行ったことを報告すると、彼女は彼を夫であると信じて彼とベッドをともにした。
ゼウスはとても楽しく彼女とともに寝たので、一日を不当に使用して二晩を重ね(3)、そのためアルクメーネーは夜があまりに長いのに驚いた。
そのあと勝利を収めた夫がやってきたことが彼女に知らされたが、彼女はこれをいささかも気にしなかった。すでにその夫には会ったと考えていたからだ。そしてアンピトリュオーンが王宮に入り、彼女が落ち着いてむしろ無関心な様子でいるのをみて、彼は驚き、帰還した自分をなぜ迎えに出なかったのか、尋ねた。
その彼にアルクメーネーは次のごとく答えた。「すでについさっきあなたは帰ってこられ、あたしと寝室をともになさいました。そしてあたしにオイカリアでの武勲を語ってくださいました」と。
彼女が出来事をつぶさに語ったとき、アンピトリュオーンは自分の代わりにある神が介在したことを感じ取り、その日以来、彼女と寝ることをやめた。彼女はゼウスに抱かれた結果、ヘーラクレースを生んだ。
注(1)ペルセウスの孫、アルカイオスの息子。アルクメーネーの父エーレクトリュオーンを事故で殺したためアルクメーネー(まだ結婚はしていない)とともにミュケーナイから追放され、テーバイにくる(アポロドーロス、二・四・四以下相互参照)。30 エウリュステウスに命じられたヘーラクレースの十二の功業
P081 (2)アイトーリア地方とエウボイア島に同名の町があるが、そのいずれなのかは不明。グラントはこれをヒュギーヌスの間違いとしている。アポロドーロスの記述によると、これはむしろ、タポス島のテーレボエース人との戦闘で、アルクメーネーに要請された彼女の兄弟の仇を討つ戦いであった(アポロドーロス、二・四・六~七)
(3)一日を二晩の長さに引き延ばした、ということらしい。なおアポロドーロスは「その一夜を三倍にし」たとしている(二・四・八相互参照)。
ヘーラクレースは幼少のころ、ヘーレーが送りつけた二匹の蛇を両手で殺した。それゆえ彼は最初に生まれたこと称された(1)。
ネメア[アルゴリス地方の町]のライオンは、セレーネー[月の神]が出口の二つある洞穴で養っていたが、彼は不死身のこのライオンを殺した。彼はその毛皮を上着がわりに着用した。
レルネー[アルゴリス地方の湖]の水蛇はテューポーンの娘で、九つの頭をもっていたが、彼はこれをレルネーの湖で殺した。この水蛇の毒の力はたいへんなもので、吐く息で人間を殺すほどだった。もし誰かが水蛇が寝ていた場所を通ると、その体の痕跡が息を吹きかけ、その者はよりいっそうむごたらしい死をむかえるのだった。
P82彼はアテーネーの助言を得てこれを殺し、内臓をえぐり出し、その胆汁を自分の矢に塗りつけた。こうして、その後彼がこの矢で射たものはすべて死をまぬがれなかった。それで後に彼自身も、プリュギアで(2)世を去ったのだ(3)。
エリュマントス山[アルカディア、アカイア、エーリス三地方の国境にある]の猪を倒した。
アルカディアの黄金の角をもつ獰猛な鹿を、生きたままエウリュステウス王[英雄に難行を命令した王]の目の前に連れていった。
ステュンバーロス湖[アルカディアにある]のアレースの島にいた鳥ども、これは自分の羽を槍として投げ落としていたのだが、これらを矢で射殺した。
[エーリスの]アウゲイアース王の牛の糞を一日で掃除した。大部分はゼウスの助けを受けた。川の流れを引き入れてすべての糞を洗い流したのだ。
パーシパエー[ミーノースの后]が同衾した牝牛(4)を、クレータ島から生きたままミュケーナイ[アルゴリス地方の町]へ曳いていった。
トラーケー王ディオメーデース(5)と、人間の肉をくらっていた彼の四頭の馬を、従者アブデーロスもろとも殺した。この四頭の名前はポダルゴス、ランポン、クサントス、ディーノスだった。
アマゾーン族の女ヒッポリュテーは、アレースと女王オトレーレーの娘だったが、彼女からアマゾーンの女王の帯(6)を奪い取った。そのとき捕虜にしたアンティオペーをテーセウスに譲った。
P083 ゲーリュオーンは、クリューサーオール[ポセイダーオーンの子]の息子で、三つの体をもっていたが、ヘーラクレースはこれを一本の投げ槍で殪した。
テューポーンの息子である巨大な龍がヘスペリスの園の黄金の林檎を絶えず見張っていたが、これをアートラース山[北アフリカ西部にある]で殺し、林檎はエウリュステウス王のもとへ持ち帰った。
テューポーンの息子である犬ケルベロスを、冥府から王の前に連れてきた(7)。
注(1)「最初に生まれた子(primigenius)」ということばがここでは意味不明。ヘーラクレースはゼウスの胤から生まれたが、アンピトリュオーンの胤からはイーピクレースが生まれ、二人は父親を異にする双子兄弟である(アポロドーロス、二・四・八)。31 ヘーラクレースの付随的功業
(2)ふつうヘーラクレースはテッサリアのオイテー山で死んだとされる。プリュギアはトロイアのある地方。
(3)後日ヘーラクレースは、エウエーノス川で自分の妻を犯そうとするネッソスを、この毒を塗った矢で射殺した。死にぎわにネッソスは自分の血を集め、これは媚薬ゆえいざというときに使えとデーイアネイラに渡した。だまされた彼女は、妻の座が危ういと思ったときこれを塗ったシャツを英雄に送りとどけ、これを着た彼は焼かれて死んだ(34、36話)。
(4)ミーノータウロスの「父親」である。
(5)ディオメーデースは戦神アレースの息子。トロイアで活躍する戦士とは別。
(6)アポロドーロスはエウリュステウス王の娘アドメーテーがこの帯を欲しがったと記している(二・五・九)。
(7)十二功業はアポロドーロスも全部述べている(順序は二、三ヒュギーヌスと異なるが)ので、参考までに各エピソードの掲載箇所を挙げておく。(略)
ヘーラクレースは大地の息子アンタイオスをリビュエー[リビア]で殺した。この男は客人に自分と格闘することを強要し、力尽きた相手を殺していたのだ。格闘してこれを殺した。
エジプトのブーシーリスは、客人をいけにえとして神々にささげる癖があった。彼の悪習を聞き知ったヘーラクレースは、頭にリボンを巻かれて祭壇にみちびかれるに任せていたが、
P085 いよいよブーシーリスが神々に祈ろうとしたとき、ヘーラクレースは彼と犠牲を執行する神官たちを棍棒で殺した。
アレースの息子キュクノスを、武器で打ち倒したあと殺した。そのためアレースががやってきて、息子ゆえに武器を交えて彼と闘おうとすると、ゼウスが二人の間に雷を送りつけ、こうして二人は分けた。
トロイアで、ヘーシオネーを犠牲として受け取る予定だった海の怪物を殺した。[その後]ヘーシオネーの父ラーオメドーン[トロイア王]が彼女を[ヘーラクレースに]渡さなかったので、矢で殺害した。
プロメーテウスの心臓をむさぼっていた鷲アイトーンを、矢で殺した。
ポセイダーオーンの息子リュコス(1)が、クレオーンの娘でヘーラクレースの妻であるメガレーと、息子テーリコマスおよびオピーテースを殺そうと望んだので、これを殺した。
アケローオス川[アイトーリア地方を流れる]の神はあらゆる姿に変身していた。この神が、デーイアネイラとの結婚をめぐってヘーラクレースと闘ったとき、牝牛に変身した。
ヘーラクレースは牝牛の角をひっこ抜き、その角をヘスペリスたち(2)、またはニュンペーたちに寄進した。この女神らはこれに果実をいっぱい詰め込み、これを豊饒の角(3)と呼びなした。
P86ヘーラクレースは、ヒッポコオーンの倅ネーレウス(4)を、その十人の息子たちともどもに殺害した。そのわけは、[ヘーレーにより理性をうばわれた]ヘーラクレースが、自分の妻である、クレオーンの娘メガレーおよび自分の息子、テーリマコスとオピーテースを殺したとき、ネーレウスが彼を浄めもお祓いもしてくれなかったからだ。
彼がエウリュトスの娘イオレーを妻にしたいと求め、エウリュトスが拒絶したとき、彼はエウリュトスを殺した。
ケンタウロス(5)のネッソスが、デーイアネイラを犯そうとしたので、これを殺した。
ケンタウロスのエウリュティオーンが、デクサメノスの娘で、ヘーラクレースの婚約者であるデーイアネイラ(6)を妻にしたいと望んだので、これを殺した(7)。 注(1)リュコスはエウリーピデース作『ヘーラクレース』でテーバイ王として登場する人物と同一らしい。
(2)西方の果て、オーケアノス(大洋)の岸辺に住むニュンペーたち。一頭の龍とともに黄金の林檎が生える神々の園を見張るのが役目だった。
(3)グラントはこの角の受け取り手はふつうナーイアデスというニュンペーたちだったという。
(4)ネーレウスの父親については10話の注(1)を参照されたい。ネーレウスはピュロスの王で、のちにトロイア戦争で活躍するネストールの父親。
(5)上半身は人、下半身は馬の姿をした一族で、テッサリアの山地に住した。蛮族である
P087 が、例外的な知者としてケイローンが有名。
(6)ふつうはムネーシマケーという名前が伝えられている(アポロドーロス、二・五・五)。むろん、直前の同名女性とは別人。
(7)この項目も前項と同様アポロドーロスがほとんど同じような話を伝えているので、その場所を示す。
(略)32 メガレー(相互参照)
ヘーラクレースが、エウリュステウス王によって、三つの頭をもつ犬を求めて[冥府へ]送り出されたとき、ポセイダーオーンのの息子リュコスは彼が亡き者となったと考え、彼の妻でクレオーンの娘であるメガレーと、彼の息子たち、テーリマコスおよびオピーテースを殺害し、王国を乗っ取ろうと欲した。
そこへ突然ヘーラクレースが現われ、リュコスを殺した。その後、ヘーレーにより理性を失い、彼はメガレーと、息子テーリマコスおよびオピーテースを殺してしまった(1)。
P88正気に戻ったあと、彼はアポローンに、どうすればこの罪業を祓い浄められるのか、神託を自分に与えてほしいと請願した。アポローンは彼にその神託を与えたがらなかったので、怒ったヘーラクレースはアポローン神殿から三脚台を奪い取った。
のちにゼウスの命令で、彼はこれを返却した。そしてゼウスは、いやがるアポローンに、神託を与えるように命じた。それにより、ヘーラクレースは、ヘルメースにみちびかれて、女王オンパレー(2)に奴隷として与えられた。
注(1)十二の功業が終わったあと英雄がメガレーと二人の子供を殺したとするのは、エウリーピデースに倣うものであるらしい(グラント)。だがアポロドーロスは、この親族殺しの浄めとして功業を課されたという(二・四・一二)。
(2)イアルダネースの娘で、リューディアの女王。英雄はこの女王に買われて三年間彼女に奉仕した(二・六・二~三相互参照)。
(略)P091
(略)37 アイトレー
ポセイダーオーンと、パンディーオーンの息子アイゲウスとは、同じ夜、アテーネーの神殿で、ピッテウスの娘アイトレーと、臥所ふしどをともにした。ポセイダーオーンは、彼女が生んだ子供をアイゲウスにゆずった。
アイゲウスはトロイゼーン[アルゴリス地方の町]からアテーナイへ帰ったあと(1)、自分の剣を岩の下に隠し(2)、そしてアイトレーに、この岩を持ち上げて父親の剣を取り出せる男がいたら、その男を自分のもとへ送るようにと指示した。
それが息子を認知するしるしになるだろう、といって、かくして、のちにアイトレーはテーセウスを生み、彼が成人すること、母親は彼にアイゲウスの指示したことを教え、剣を取り出すようにと岩を示し、アテーナイにいるアイゲウスのもとへ出発するよ
P093 う命じた。そして彼は、その途上、悪事を働いていた者を残らず殺した。
注(1) グラントは、「トロイゼーンからアテーナイへ帰るまぎわに」と訳していて分かりやすい(ピッテウスはトロイゼーンの王)が、マーシャル、ポリオいずれのテキストもpostquamと書いてあるのでこのままにしておく。38 テーセウスの功業
(2) アポロドーロスは剣とサンダルを隠したと記している(三・一五・七)。
テーセウスはポセイダーオーンの息子コリュネーテース(1)を武器で殺した。
ピテュオカンプテース(2)を殺した。ピテュオカンプテースは、通りかかる旅人に、自分と一緒に松の木を地面に折り曲げることを強制し、旅人が松の木をつかんでいると、彼は力任せにこの松を放すのである。こうして旅人はしたたかに弾き返されて死ぬのだった。
プロクルーステースはポセイダーオーンの息子だった。彼のもとへ客がくると、その客の身長が高い場合は、小さい寝台に寝かせ、体のはみ出した部分を切り取っていた。しかしもし身長が低ければ、長い寝台をあてがい、鉄敷かなしきの上に乗せ、[身長]が寝台の長さに等しくなるまで圧おし延ばすのだった。テーセウスはこれを殺した。
スケイローンは、海に面した切り立った場所に座り、通りかかる旅人に、無理やり自分
P094の足を洗わせ、その最中に海へつき落としていた。これをテーセウスは同じやり方で海へ投げ落として殺した。この場所は彼にちなんでスケイローンの岩とよばれた。
ヘーパイストスの息子ケルキュオーンを武器で殺した。
クロミュオーン[コリントス近傍の村]にいた猪を仕留めた。
ヘーラクレースがクレータからエウリュステウスのもとへ連れてきて、当時マラトーン[マラソンの語源となった町]にいた牡牛を殺した。
クノッソスの町[クレータ島にある]でミーノータウロス[半人半牛の怪物]を殺した(3)。
注(1)「棍棒をもつ男」の意で、ぺリペーテースの綽名。39 ダイダロス
(2)「松を曲げる男」の意で、シニスの綽名。
(3) アポロドーロスがテーセウスの功業を述べている場所を参考までに挙げる。
コリュネーテース(三・一六・一、ペリペーテースという名で)、ピテュオカンプテース(同所、シニスという名で)、プロクルーステース(「摘要」一・四、ダマステースという名で)、スケイローン(「摘要」一・二)、ケルキュオーン(「摘要」一・三)、クロミュオーンの猪(「摘要」一・一)、マラトーンの牡牛(「摘要」一・六)、ミーノータウロス(「摘要」一・七~九)。
P095 エウパラモスの息子ダイダロスは、職人の技術をアテーネーから授かったといわれているが、彼は、自分の妹の息子ペルディクスを高い屋根から突き落とした(1)。ペルディクスが最初に鋸のこぎりを発明したので、その技術の才をねたんだのである。
この悪行ゆえに彼は追放され、アテーナイからクレータ島のミーノース王のもとへ去った。
注(1) 死後ペルディクスはシャコという鳥になったとオウィディウスはいう(『変身物語』八・二三六~二五九)。アポロドーロスはペルディクスをタロースとよび、ダイダロスはこれをアクロポリスから投げ落としたとしている(三・一五・八)。ディオドーロスもタロースという名前を使っている(四・七六・四~六)。40 パーシパエー
太陽神ヘーリオスの娘でミーノースの妻であるパーシパエーは、長年にわたって女神アプロディーテーへの犠牲を怠った。そのためアプロディーテーは彼女にことばにするのもおぞましい恋情を植えつけ、女神がかわいがっていた牡牛をパーシパエーが愛するように仕組んだ(1)。
そこへ追放されたダイダロスがやってきて、彼女に救いを求めた。彼は彼女のために木製の牡牛をこしらえ、本物の牡牛の皮をこれにかぶせ、その中に入って彼女は牡牛と交わった。この抱擁の結果、彼女は、頭は牛で、下の部分は人間の姿をしたミーノータウロスを出産した。
P096そこでダイダロスはミーノータウロスのために出口の分からない迷宮をこしらえ、ミーノータウロスはここに閉じ込められた(2)。
事情を知ったミーノースは、ダイダロスを投獄した。だがパーシパエーが彼を牢獄から解放した。こうしてダイダロスは、自分と息子イーカロスのために羽根を作り、これを身につけた。そして飛び出した。とても高い位置で飛んでいたイーカロスは、蠟が日光で暖められたため、海に落ちた。
この海は彼にちなんでイーカロスの海(3)とよばれた。ダイダロスはさらに飛んで、シキリア島のコーカロス王のもとへきた。一説によれば、テーセウスはミーノータウロスを殺したあと、ダイダロスをその故郷アテーナイへ連れ戻した。
注(1) この異常な恋情の原因は、アポロドーロスによれば、ミーノースに犠牲のことでたばかれたポセイダーオーンの怒りである(三・一・四)。ディオドーロスも同様に述べている(四・七七・二~三)。41 ミーノース
(2) アポロードス(前掲箇所)、ディオドーロス(四・七七・四)。
(3) エーゲ海南部でキュクラデス諸島を含み、カーリア地方を臨む海域。
ゼウスとエウローペーの息子ミーノース[クレータ島の王]が、アテーナイ人たちと戦争
P097 したとき、彼の息子アンドロゲオースが戦闘中に殺された。ミーノースがアテーナイを征服したあと、彼の課税が始まった。彼は、アテーナイ人は毎年自分たちの子供を七人づつ、ミーノータウロスの食料として、送るべきだと定めた。
テーセウスは、トロイゼーンからやってきて、祖国がどれほど大きな災厄におそわれたかを聞いたとき、みずからミーノータウロスのもとへいくことを申し出た。父親が彼を送り出した際に、彼は父親に、もし勝利者として戻ってくる場合は船に白い帆を掲げると約束した(1)。
ミーノータウロスのもとに送られる者たちは、黒い帆で航海するのが常だった[黒い帆は喪のしるしか?]。
注(1) この約束をしたのがテーセウス自身なのか、父親なのか原文のラテン語では判断がむずかしい。どのみちたいした違いはないが、ここではテーセウスにしておく。アポロドーロスは父親が息子に「もし生きて帰ったなら白い帆を張れ」と命じた、としている(「摘要」一・七)。42 テーセウスとミーノータウロス
テーセウスはクレータ島にきたあと、ミーノースの娘アリアドネーにいたく愛された。彼女は、そのため、兄を裏切り、この客人を守ってやるほどだった。というのも、彼女はテーセウスに、迷宮の出口を教えたのだから。そこを通ってテーセウスが中に入り、
P098ミーノータウロスを殺し(1)、アリアドネーの指図に従って糸をたぐり寄せながら外へ出ると、彼は、自分と結婚するよう彼女に約束してあったので、彼女を連れ去った(2)。
注(1) アポロドーロスは拳で殺したという(「摘要」一・九)。43 アリアドネー
(2) アポロードス「摘要」一・八~九。
テーセウスは嵐でディーエー島(1)に足止めされた。そこで、もしアリアドネーを故国[アテーナイ]へ連れていったなら、面目を失うだろうと考えて熟睡している彼女をディーエー島に置き去りにした。
彼女に恋をした[酒神]ディオニューソスが彼女を連れ出して結婚した(2)。だがテーセウスは、航海中に黒い帆を外すことを忘れてしまった(3)。かくして彼の父アイゲウスは、テーセウスがミーノータウロスにやっつけられたのだと信じて、海に身を投げた。このことからこの海はアイゲウスの海[エーゲ海のこと]よよばれた。
ところでテーセウスは、アリアドネーの妹パイドラと結婚した。
注(1) クレータ島の首都クノッソスの沖合に浮かぶ島。クイントゥス(四・三八九)やオウィディウス(『変身物語』八・一七四)もアリアドネーはここで英雄に捨てられたといっている。ホメーロスもディーエー島の名前は知っていたが、ただし『オデュッセイア』41 コーカロス
P099 では、このディーエー島でアリアドネーは女神アルテミスに殺されたと語られている(一一・三二四~三二五)。アポロドーロスはナクソス島といっている(「摘要」一・九)。
(2) アポロドーロスが語る三人のかかわり合いは、ヒュギーヌスのそれとはかなり違う。「テーセウスはアリアドネーや子供らとともにナクソス(ディーエーではなく)島に到着。ここでディオニューソスがアリアドネーを見そめ、レームノス島に奪い去って結婚した」(「摘要」一・九)。
(3) アポロドーロスによれば、島でアリアドネーを失った悲しみのためである(「摘要」一・九)。
ダイダロスのあやまちによって数々の災いをこうむったので、ミーノースはシキリア島まで彼を追いかけ、コーカロス王に彼を自分に返してくれるよう請求した。コーカロスはこれを彼に約束したが、ひそかにこのことを知ったダイダロスは、王女たちに援助を求めた。王女たちはミーノースを殺した(1)。
注(1) ディオドーロスもこの謀殺事件を伝えているが、しかしこの著者はコーカロスの王女たちには言及せず、コーカロス自身が入浴中のミーノースを釜茹でにして殺したといっている(四・七九・二)。45 ピロメーラ
アレースの子でトラーケー人であるテーレウスは、パンディーオーン(アテーナイ王)の娘プロクネーと結婚していた。テーレウスは、アテーナイにいる岳父パンディーオーンのもとへきて、プロクネーは死んだといって、もう一人の王女ピロメーラとの結婚を求めた。
パンディーオーンはこれを許可し、ピロメーラを護衛をつけて送り出した。テーレウスはこの護衛たちを海に投げ込み、山の中で嫌がるピロメーラを(1)犯した。
さらにテーレウスは、トラーケーへ戻ると、ピロメーラをリュンケウス王にゆずった。リュンケウスの妻ラエトゥーサは、プロクネーの仲良しだったので、すぐさまこの側妻(プロメーラ)をプロクネーのもとに連れていった。
プロクネーは自分の妹を認め、テーレウスの不届きなふるまいを認識し、仕返しを考えて、テーレウス王に大いに感謝するふりを始めた。その間、テーレウスに対して、神託が下されていた。彼の息子イテュスには、近親者の手による死が迫っている、というものである。
このお告げを聞いたテーレウスは、自分の兄弟ドリュアースが息子の死をたくらんでいると考え、無実のドリュアースを殺害した。
それからプロクネーは、自分とテーレウスのあいだに生まれた子イテュスを殺し、その
P101 父親に食事として供し、妹とともに逃走した。この大罪に気づいたテーレウスは逃げる二人を追跡した。神々が哀れをもよおした結果、プロクネーは燕に、ピロメーラは小夜鳴鳥ナイチンゲールに変身した。そしてテーレウスはハイタカ(2)に変えられたと伝えられる。
注(1)ここはボリオの解釈に従う。マーシャルのテキストは「山中で見つけたピロメーラを」となっている。グラントの訳はマーシャルのテキストに同じ。後者の場合、テーレウスはどこにいたのかと思考するする合理性にもとる。46 エレクテウス(略)
(2)この物語はオウィディウス『変身物語』六・四一二~六七四相互参照で詳述されている。ヒュギーヌスがこれを下敷きにしたのかどうか不明だが、ひどく簡略になっている。『変身物語』でテーレウスはヤツガラシという鳥になる(アポロドーロスでも同様、三・一四・八相互参照)。なおヒュギーヌスは散逸した悲劇を手本にしたらしいが、ピロメーラの物語でリュンケウス、ラエトゥーサ、ドリュアースが登場するのは彼のテキストにおいてのみであると指摘されている(ボリオ、グラント)。なお、アポロドーロスは、テーレウスがピロメーラの舌を切り取り、しかしピロメーラは自分の服に文字を書いて姉妹プロクネーに災いを知らせたと記している(前掲箇所)。
47 ヒッポリュトス
ミーノース(クレータ王)の娘でテーセウスの妻であるパイドラは、自分の義理の息子ヒッポリュトスに恋をした。だが彼を自分の意に添わせることができなかったので、「あたしはヒッポリュトスに犯されました」と書いた文字板を夫に送り(1)、自分は首を吊って死んだ。
そしてテーセウスは、事実を聞いて、息子に城壁の外へ退去するよう命じ、
P103 父ポセイダーオンに、実の息子を破滅させてくれるよう願った。かくして、ヒッポリュトスが馬車に乗ってはこばれていくと、突如海から牛が現れ、そのうなり声にいののいた馬どもがヒッポリュトスを放り出し、命を奪った(2)。
注(1)手本となったらしいエウリーピデースの『ヒッポリュトス』では、パイドラは文字板を握り締めたまま死んだことになっている(八五六以下)。48 アテーナイの王たち
(2)ヒッポリュトスは他に49話、243話、250話、251話で語られる。251話では、ローマ時代にウィルビウスなる人物に転生したと述べられている。
(略)49 アスクレーピオス
アポローンの息子アスクレーピオス[医神]は、ミーノースの息子グラウコス(1)、もしくはヒッポリュトス(2)の生命を取り戻してやったといわれている。そのため彼をゼウスが雷で叩いた。アポローンはゼウスを害することはできなかったので、雷を作った者たち、すなわちキュクロープスたちを殺した。この行為が祟って、アポローンはテッサリア王アドメートスに隷従させられた。
注(1)136,251話では、ポリュエイドスがグラウコスをよみがえらせたと語られている。なお、アスクレーピオスによるグラウコス蘇生は、アポロドーロスも伝えている(三・一〇・四相互参照)。50 アドメートス
(2)故国を追放されたアテーナイ近傍で死んだヒッポリュトス(47話)は、アスクレーピオスの医療で再生を果たし、ローマでウィルピウスとなってよみがえった。このいきさつはオウィディウスがつぶさに語っている(『変身物語』一五・四九七以下)。251話。
(略)P107(略)
53 アステリエー
ゼウスが巨人テイーターンの娘アステリエーにほれ込んだとき、彼女はゼウスを袖にした。ゼウスによって彼女は鶉(オルテュクス)に変えられてしまった。これは今はコートゥルニクスとよばれている。ゼウスはこの島を海に投げ捨てた(1)。そしてこの島から一つの島が生まれ、オルテュギアと称された。
この島は浮き島だった。そこへのちにレートーが、ゼウスに命じられた風の神ボレアースによってはこばれてきた。龍のピュートーンが彼女を追跡していたときのことである(140話)。そしてここでレートーは、オリーヴの木にしがみつきながら、アポローンとアルテミスを出産した。この島はのちにデーロスとよばれた。
P108注(1)アポロドーロスによれば、アステリエーは巨人コイオスの娘で、ゼウスの求愛をきらって鶉に変身し、みずから海に身を投じた(一・四・一相互参照)。54 テティス
ネーレウス(海神)の娘テティスに、彼女が生む男児はその父親より強い存在になるだろう、とのお告げがあった。プロメーテウス以外(1)は誰もこのことを知らず、ゼウスが彼女と寝たがっていたので、プロメーテウスはゼウスに、もし鎖から自分を解放してくれたら、(その秘密を)知らせてやる、と約束した(相互参照)。かくして、その約束がなされたので、彼はゼウスにテティスとはベッドをともにしないように勧めた。より強大な男が生まれ、ゼウス自身が父クロノスにしたように(2)、その男がゼウスを王国から追放するかもしれないから、といった。かくしてテティスはアイアコスの息子ペーレウスに妻として与えられ、プロメーテウスの心臓(3)をむさぼっていた鷲を殺すべく、ヘーラクレースが派遣される。鷲が殺され、プロメーテウスは三万年後にして(144話)ようやくカウカソス(コーカサス)山から解放された(4)相互参照。
注(1)このことを知っている者として、他に、テミス(アポロドーロス、三・一三・五相互参照)、
P109プローテウス(オウィディウス『変身物語』一一・二二一・二二三相互参照)の名前が伝えられていた。
(2)クロノスは父親ウーラノスを追放して神々の王者になったが、やがてこれをゼウスが追放した。
(3)ふつうは肝臓とされる
(4)プロメーテウスの解放はアイスキュロス作『解放されたプロメーテウス』の主題だった(ポリオ)。この作品はわずかな断片しか残っていない。
(略)P115
(略)63 ダナエー
ダナエーは(アルゴス王)アクリシオスとアガニッペーの娘だった。彼女には、彼女が生む子供はアクリシオスを殺害するだろう、とのお告げがあった。これを恐れたアクリシオスは、ダナエーを石の壁で閉じ込めた。ところがゼウスが黄金の雨に変身してダナエーと
交わったあと、この抱擁からペルセウスが誕生した(1)。この情交に怒った父は彼女を、ペルセウスとともに大箱に閉じ込めて、海に投げ込んだ。ゼウスの意志で彼女はセリポス島(キュクラデス諸島の一つ)にはこばれ、漁師ディクテュスがこの箱を発見した。
そこで彼が箱をこわすと、女性と子供がでてきたので、二人をポリュデクテース王のもとへ連れていった。
王は彼女と結婚し、ペルセウスをアテーネーの神殿で養育した。アクリシオスは、彼らがポリュデクテース王のもとに滞在していることを知ると、二人を連れ戻すべく出発した。彼がそこへ着くと、ポリュデクテースは二人のためにとりなしてやり、ペルセウスは自分の祖父に、決して彼を殺しはしない、と約束した。
祖父が嵐に阻まれているうちに、ポリュデクテースが死亡した。その追悼競技大会が行われたとき、ペルセウスは円盤を投げた。その円盤を風がアクリシオスの頭へはこび、彼を殺した(2)。かくして、自分の意志で望んでいなかったことが、神々の意志で成就されたのだ。祖父を埋葬したあと、彼はアルゴスへ進発し、祖父の王権を領有した。
注(1)オウィディウス『変身物語』四・六一一。アポロードス、二・四・一。
(2)アポロードスによれば、ペルセウスが祖父を殺したのは、ラーリッサの王テウタミデースが亡父のために催した競技大会でのことである。ここでは円盤は頭ではなく足に当たった(二・四・四)。
P133
(略)75 テイレシアース
キュレーネー山[アルカディアとアカイアの国境にある]で、エウエーレースの息子で羊飼いだったテイレシアースが、交尾している二匹の蛇を棒で叩いた(1)、あるいは踏みつけたと伝えられている。そのせいで彼は女の姿に変えられてしまった。のちに、神託に従って、同じ場所で[同じ二匹の]蛇を踏みつけたところ、彼は元の姿に戻った。
そのころ、ゼウスとヘーレーの間に、男と女のどちらが、男女の交合からより大きな快楽を得るのか、という愉快な口論が起こった。二人はこのことについて、どちらをも体験しているテイレシアースに判定を仰ぐことにした。彼がゼウスに有利に判定したので、立腹したヘーレーは手の甲で彼の目を覆って彼を盲目にした(2)。しかしゼウスはその代償に、彼が七世代にわたって生き長らえ、余人をしのぐ予言者になるようにしてくれた。
注(1)アポロドーロスは、交尾中の蛇に出くわしたためにテイレシアースが性転換したという話の出自はヘーシオドスだとしている。ただ、彼が紹介する節では、予言者は蛇をみただけで、踏みつけはしない(三・六・七相互参照)。76 テーバイの王たち
(2)問われたテイレシアースは「性交の喜びを十とすれば、男と女との快楽は一対九である」といったので、ヘーレーが彼の目を潰した(アポロドーロス、前掲箇所)。
カドモスはアゲーノールの子。77 レーダ
アンピーオーンはゼウスの子。
ポリュドーロスはカドモスの子。
ラーイオスはラブダコスの子。
ペンテウスはエキーオーンの子。
クレオーンはメノイケウスの子。
オイディプースはラーイオスの子。
ポリュネイケースはオイディプースの子。
リュコスはポセイダーオーンの子。
P135 エテオクレースはオイディプースの子。
ゼートスはゼウスの子。
ラブダコスはポリュドーロスの子。
ゼウスは、白鳥に変身して、エウロータース川[スパルタを流れる]のほとりで、テスティオス(1)の娘レーダを抱擁した。彼女はゼウスの胤からポリュデウケースとヘレネーを生み、[夫]テュンダレオース[の胤]からカストールとクリュタイムネーストラーを生んだ。
注(1)軍神アレースの息子(アポロドーロス、一・七・七)。78 テュンダレオース
オイバロスの息子テュンダレオースは、テスティオスの娘レーダとのあいだにクリュタイムネーストラーとヘレネーをもうけた。彼はクリュタイムネーストラーを、アトレウスの息子アガメムノーンと結婚させた。ヘレネーはその美貌が並外れていたために、諸都市
P136から多数の求婚者が彼女を求めてやってきた。テュンダレオースは、自分の娘クリュタイムネーストラーがアガメムノーンに離縁されるのを恐れ、さらに、このことからなんらかの揉めごとが生じるのを心配して、オデュッセウスの勧めで誓いをたてた上で(1)、自分が結婚したいと思う相手に冠をかぶせるよう、ヘレネーに判断をゆだねた。
彼女はメネラーオスに冠をかぶせた。そしてテュンダレオースは彼女を彼と結婚させ、死にぎわにメネラーオスに王国をゆずった。
注(1)誰が誓いを立てたのか原文は曖昧、ポリオはテュンダレオース、グラントはオデュッセウスとしている。集団での誓いとしては、オデュッセウスがテュンダレオースに勧められて求婚者全員に要請して行わせたものがある。すなわち「ここでえらばれた婿が将来何らかの難儀をこうむることがあれば、いまここにいる求婚者は全員で婚を助けなくてはならない」という誓約である(アポロドーロス、三・一〇・九相互参照)。79 ヘレネー
なおパウサニアースは、求婚者らのこの誓約について次のようなことを述べている。「(スパルタからアルカディアに向かう道を北上すると)『馬の墓』。テュンダレオースがここで馬を供養し、ヘレネーの求婚者たちをその馬の肉片の上に立たせた上で、(一同に)誓いを立てさせた」(三・二〇・九)この誓いの方法は他のギリシャ神話には例がない。
P137 アイゲウスと、ピッテウスの娘アイトレーとの息子テーセウスは、イクシーオーンの息子ペイリトオスとともに、テュンダレオースとレーダの幼い娘[ヘレネー]が、アルテミスの神殿で犠牲をささげているところをさらい、アテーナイへ、さらにアッティカ地方のある村(1)へ拉致した。
ゼウスは、この二人が、みずから危険に身をさらすほどのもの凄い大胆さをそなえているのをみて、二人して、ハーデース[冥府の王者]に、ペイリトオスのためにペルセポネー[ハーデースの后]を妻として要求せよと、二人に夢の中で命じた。
彼らがタイナロン島(2)から冥府へ降りて、なにゆえにやってきたのかをハーデースに明かすと、二人は復讐女神らに押し倒され、長い間苦しめられた。そこへ、三つの頭をもつ犬[ケルベロス]を連れだすためにヘーラクレースがやってきたので、彼らは彼に保護を願い出た。ヘーラクレースはハーデースの承諾をもらい、二人を無傷で連れ出した(3)。
兄弟カストールとポリュデウケースはヘレネーのために闘い、テーセウスの母アイトレーとペイリトオスの妹(4)ピサディーエーをつかまえ、召し使いとして妹[ヘレネー]に差し出した。
注(1)この村をアポロドーロスはアピドナイとよんでいる(三・一〇・七相互参照)。80 カストール
(2)原文では島とあるが、実際は岬、ペロポンネーソス半島南部中央から突き出ている。ヘーラクレースは冥府の犬ケルベロスを拉致すべく、ここから冥府へ降りる(エウリーピデース『ヘーラクレース』二三~二五)。
(3)ヘーラクレースが救い出したのはテーセウスだけ、とするのがふつうである。
(4)ポリオによればピサディーエーという名前はこのヒュギーヌスにしか出てこない。92話ではティサディエーとなっているが、同一人物である。
アパレウスの息子であるイーダースとリュンケウス(1)は、メッセーネー出身で、レウキッポスの娘ポイベーとヒラエイラの婚約者だった。二人はこの上なく美しい処女で、ポイベーはアテーネーの、ヒラエイラはアルテミスの巫女だった。
ところがカストールとポリュデウケースが恋のとりこになり、彼女らを奪い去った。婚約者を失ったイーダースとリュンケウスは、彼女らを取り返そうとして武器を取った。戦闘でカストールがリュンケウスを殺した。兄弟を失ったイーダースは、戦闘と婚約者を断念し、兄弟の埋葬を始めた。
イーダースが遺骨を墓に収めようとしていると、カストールがやってきて、墓標を立てるのを邪魔しはじめた。カストールは、まるで女を相手にするようにリュンケウスをやっつけた、といった。腹を立てたイーダースは、身に帯びていた剣でカストールの股の付け根を刺しつらぬいた。
イーダースは墓標の柱を立てていたが、この柱をカストールに投げ倒し、こうしてカストールは殺された、とする説もある。
P139 この知らせがポリュデウケースに届くや否や、彼は駆けつけ、ただの一撃でイーダースをやっつけ、取り返した兄弟の遺骸を埋葬した(2)。
だが彼自身はゼウスから星を受取ったが、兄弟[カストール]には与えられなかった。その理由は、ゼウスいわく、カストールとクリュタイムネーストラーはテュンダレオースの胤から生まれ、彼自身とヘレネーはゼウスの子であるから、というものであった。
そのとき、ポリュデウケースは、自分への贈り物を兄弟と分かち合うことを許していただきたいと要求した。これは許可された。それゆえ「自分が代わりに死ぬことにより、相手がよみがえる」といわれるのである(3)。このことにちなんでローマ人は次の習慣を保っている。
ローマ人が馬から馬へ飛び移る騎手(4)[デースルトル]を送り出すとき、この騎手は、ブリュギア帽をかぶって、二頭の馬を曳き、一方の馬から他方へ飛び移り、こうして彼は自分の務めと兄弟のそれを果たす[というしぐさを示す]のである。
注(1)アパレウスはテュンダレオースの兄弟、カストールとポリュデウケースはテュンダレオースの息子、したがってここで語られる二組の兄弟は従兄弟どうしである。81 ヘレネーの求婚者たち
(2)アポロドーロスは闘争の経過を次のように語る。まずカストールがイーダースに殺され、ついでポリュデウケースがリュンケウスを殺害、最後にゼウスがイーダースを雷で撃ち殺す。さらにこのアポロドーロスの記述では、二組の争いは四人で略奪した牛の分配に端を発したもので、女性の奪い合いは無関係である(三・一一・二)。 (3)ウェルギリウス『アエネーイス』から(六・一二一)。
P140(4)グラントは「裸馬に乗る騎手」と訳している。
(略、オデュッセウスほか)82 タンタロス
P141 ゼウスとプルートーの息子タンタロスは、ディオーネーとのあいだにペロプスをもうけた。ゼウスは日ごろタンタロスに自分の考えを打ち明け、神々の食卓に陪食することを許していた。タンタロスはゼウスの考えを人間たちに知らせてしまった。
伝えによると、そのため(1)、彼は冥府で胴体まで水に浸かって立ち、絶えず喉がかわき、水を飲もうとして手を伸ばすと水は退いてしまう。同様に、頭上に果実が垂れ下がっているが、彼がこれを取ろうとすると、枝が風に動かされて遠のいてしまう。同様に、頭上に巨大な岩がぶらさがっていて、彼はいつもこれが自分にぶつかってこないかと気もそぞろである(2)。
注(1)タンタロスの懲罰の原因は、息子ペロプスを殺し、その肉を神々の食卓に供したから、とする話もよく知られている。次の83話を参照。83 ペロプス
(2)タンタロスの罰は『オデュッセイア』で語られている(一一・五八二~五九二)。そこでは冥府の水はタンタロスの顎まで浸している。それからぶら下る巨岩は記されていない。
タンタロスと、アートラースの娘ディオーネーとの息子ペロプスは、タンタロスによってばらばらにされ、神々の食卓に供された。そのとき、彼の腕をデーメーテールが食べてしまった。しかし神々の全能のおかげで彼は生命をとりもどした。残っていた他の体の部分がつなぎ合わされると、肩がつながっていないので、デーメーテールはその部分に象牙の肩をあてがった(1)。
注(1)ピンダロス『オリュンピア篇』一・二四以下、ウェルギウス『ゲオルギカ』三・七。P209(略、予言者たち、オイネウス)
130 イーカリオスとエーリゴネー
父なるディオニューソスが、自分の果実(葡萄)の極上の味と楽しさをみせるため、
P211 人間たちのもとへやってきたとき(1)、(アテーナイ市民)イーカリオスとエーリゴネーのもとで寛大なもてなしを受けた。彼は二人に、葡萄酒の詰まった皮袋を贈り物として与え、他の土地でもこれを普及させるよう命じた。
イーカリオスは重たい荷車を引き、娘エーリゴネーと愛犬マイラを連れてアッティカの地におもむき、羊飼いたちと出会い、極上の味わいを教えた。羊飼いたちは際限もなく飲んだので(2)、酩酊して倒れてしまった。
彼らはイーカリオスが自分らに毒を盛ったと判断し、棍棒で彼を殺してしまった。死んだイーカリオスに愛犬マイラが吠えてよびかけ、エーリゴネーに父親が埋められずに横たわっている場所を知らせた。そこへきた彼女は、父親の死骸の上で、木に首を吊って死んでしまった。
この事実に立腹した父なるディオニューソスは、アテーナイ(アッティカ地方の首府)の娘たちに同じ罰を加えた。このことで彼らアテーナイ人たちがアポローンの神託をうかがうと、それは彼らがイーカリオスとエーリゴネーの死をないがしろにしたせいである、という答えが得られた。
この信託にそって彼らはこの羊飼いらを罰した。そしてこの災難を記念して、エーリゴネーのために、振り子人形(オスキルラーティオー)の祭日をもうけること、さらに、葡萄の収穫のさいは、イーカリオスとエーリゴネーのために果実の初穂を選り分けるとこ、を定めた。
二人は神々の計らいで、星座の仲間入りを果たした。エーリゴネーは乙女座ウィルゴーになった。
P212われわれはこれをユースティティアとよんでいる。イーカリオスは星々の中で牛飼い座といわれ、さらに愛犬マイラはカニークラ(シーリウス)とよばれている。
注(1)アポロドーロスはアテーナイでパンディーオーンが王であったとき、としている(三・一四・七相互参照)131 ニューソス
(2)アポロドーロスは、甘い飲み物を水に混ぜずに大いに飲んだ、としている(前掲箇所)。
(略)P215(略、ラーオコーン)
136 ポリュエイドス
ミーノース(クレータ王)とパーシパエーの息子グラウコスは、ボール遊びをしているうちに、蜂蜜のいっぱい入った大樽に落ちてしまった。両親は子供を探し、子供のことをアポローンに尋ねた。二人にアポローンは、「そなたたちに不思議なものが生じた。誰かこの不思議なものを解き明かす者がいれば、その者がそなたらに子供を返してくれるであろう」と答えた。ミーノースはこの信託を聞いて、家臣らにこの不思議なもののことを尋ねはじめた。
P217 家臣らは彼に、一日に三度、四時間ごとに色を変える牛が生まれている、最初は白く、次いで赤茶色になり、最後は黒くなる、と報告した。さらにミーノースはこの不思議を解明するべく、占い師たちを招聘した。しかし謎を解く占い師が見つからなかったとき、コイラノスの息子でビュザンティオン(現在のイスタンブール)のポリュエイドス(1)が、その不思議なものは桑の木に似ていると教えた。
桑の実は最初は白く、次に赤くなり、完熟すると黒くなるからである。ミーノースは彼に「アポローンの神託によれば、そなたはわが息子を取り戻せるはずである」といった。鳥占いをしているうちに、ポリュエイドスは、葡萄酒蔵の屋根にとまり、蜜蜂を追い払っている梟に気づいた。これを予兆として受け止めたポリュエイドスは、死んだ子供を大樽から引き出した。
彼にミーノースはが「死体を発見したのだから、こんどはその生命を取り返すがよい」と命令じた。ポリュエイドスは、そんなことは不可能だと答えた。そこでミーノースは、彼に、剣をたずさえて、子供(の死骸)と一緒に墓に入るよう命じた。二人が閉じ込められたあと、突然一匹の蛇が子供の死体に近寄った。ポリュエイドスこの蛇が子供を食らおうとしているのだと思い、すぐさまこれを剣で刺し殺した。
もう一匹の蛇が仲間を探して(現れ)、仲間が殺されているのをみつけると、草をくわえて近づき、その草をこすりつけて、くだんの蛇の生命をよみがえらせた。そしてポリュエイドスも同じことをした。二人は墓の中で大声で叫び、通りかかった者がこれをミーノース知らせた。ミーノースは墓を開けるよう命じ、無傷の息子を取り返し、ポリュエイドスには数々の贈り物を持たせて故郷へ送り返した(2)。
P218
注(1)ポリュエイドスは『イリアス』ではコリントスの人(ポリュエイドスの息子エウケーノールがトロイアに出征していた、一三・六六三~六六四)であるが、アポロドーロスはこれをアルゴスの人としている(三・三・ニ相互参照)137 メロペー(アポロドーロス『ギリシア神話』相互参照)
(2)多少の相違はあるがアポロドーロスが同じ話を伝えている(三・三・一~ニ)。なお49話でヒューギヌスは、このグラコウスがアポローンの子で医神であるアスクレーピオスによって蘇生したと、別の伝承を記している。
メッセーネーの王ポリュポンテースは、アリストマコスの息子クレスポンテース[ヘーラクレースの子孫]を殺し、彼の権力と妻メロペーを手に入れた。同時に、ポリュポンテースは、クレスポンテースを殺したあと、その王国を占領した(1)。しかし、母親メロペーは、クレスポンテースとの間に生んだ、まだいとけない息子(2)をひそかにアイトーリアの人に預けた。この息子をポリュポンテースは最大限の努力を払って探し、これを殺害した者には黄金を与えると約束していた。
この息子は成年に達すると、殺された父と兄弟たちの仇(3)を討ってやると決意した。かくして彼は、自分がクレスポンテースとメロペーの息子テーレポンテースを殺したと
p219 主張して、ポリュポンテース王を訪れ、黄金を請求した。他方、王は彼に客人として留まるよう命じた。彼にもっと多くのことを尋ねるためである。
この息子が疲れて熟睡していたとき、母親と息子[テーレポンテース]の間の伝令役をしていた老人が、泣きながらメロペーのところへやってきた。老人は彼[メロペーの息子]が止宿先[アイトーリアの家庭]にはおらず、姿がみえないと訴えた。
メロペーは、眠りこけている男こそ、わが息子の殺害者であると信じ込み、わが息子を殺すことになろうとも知らずに、斧をかかえて広間に入った。そこで老人がその息子を認め、母親の大罪を阻止した。メロペーは、敵に仇を返す好機が訪れたと判断し、ポリュポンテースと和解した。喜んだ王が神事を挙行していると、くだんの客人[メロペーの息子テーレポンテース]が自分で犠牲獣を屠るふりをして、王を殺し、父の王国をとりもどした(4)。
注(1)ここは前文の反復で不可解。不当な加筆、改竄の見本と思われる。
(2)この息子の名前はここではテーレポンテースだが、アポロドーロスはアイピュトスとしている(二・八・四)。
(3)ヒュギーヌスのテキストでは他の兄弟たちが殺されとは述べられていないが、アポロドーロスはクレスポンテースと二人の息子が一緒に殺害されたとしている(前掲箇所)。
(4)この物語はエウリービデースの散逸悲劇『クレスポンテース』を要約したものらしい。断片四四八で、二人の息子が殺され、一人は落ち延びたことが語られている。
(略)P221(略)
140 ピュートーン
ガイアの息子ピュートーンは龍であった(1)。彼はアポローンより以前に、パルナッソス山の神託所から神託を与えるのを常としていた。彼に、レートーの子供によって殺されるという予言が下された。このときゼウスはポーロス(2)の娘レートーと同衾した。このことを知ると、ヘーレーはレートーが太陽の届かない場所で子供を生むようにさせた。ピュートーンはレートーがゼウスにより身ごもったことを知ると、彼女をなきものにしようと、追いかけはじめた(53話)。しかし、ゼウスの命令により風神ボレアースがレートーを吹き上げて、ポセイダーオーンのもとに連れていった。
ポセイダーオーンは彼女を保護したが、ヘーレーの神意をないがしろにしないように、彼女をオルテュギアの島に降ろし、この島を波で覆った。ピュートーンはレートーの姿をみつけることができないままパルナッソスに戻った。一方、ポセイダーオーンはオルテュギア島を高いところに移した。この島はのちにデーロス島とよばれた。
P223 この島でレートーはオリーヴ(3)の木につかまってアポローンとアルテミスを生んだ。ヘーパイストスは二人の子供たちに贈り物として矢を与えた。生まれて四日後、アポローンは母の仇を討った。すなわち、彼はパルナッソスにいってピュートーンを矢で射殺したのである(このことからアポローンには「ピュートーンの」)という添え名がある)。アポローンはその骨を大鍋に投げ込んで自分の神殿に置き、彼のために葬礼の競技を創設した。これはピューティア祭の競技といわれている(4)。
注(1)『ホメーロス賛歌』ではピュートーンはヘーレーの子供たちになっている。ヘーレーは、夫ゼウスがアテーネーを頭蓋から生み落としたことを怨み、大地や他の神々に祈ってこの怪物を授かった。女神は出産後すぐこの子をパルナッソスの泉にいる蛇に預けて養育させた(「アポローン篇」二八一以下)。141 セイレーンたち
(2)ふつう、レートーは巨神族コイオスの娘とされる。ヒュギーヌスは序文(神統記)でもレートーの父をポーロスとしている。
(3)他に棕櫚、月桂樹ともいわれる。
(4)ピューティア祭の起源はオウィディウスが述べている(『変身物語』一・四三四~四四七相互参照)。そこでオウィディウスは大地をピュートーンの母といっている。
(略)P225パンドーラ、ポローネウス、プロメーテウス
P227(略)
145 ニオベーあるいはイーオー
ポローネウスと(欠文)キンナからアーピスとニオベー(1)が生まれた。このニオベーは、ゼウスが犯した最初の人間の女であった。
ニオベーからアルゴスが生まれ、彼はアルゴスの町にその名を与えた。
アルゴスとエウアドネーから、クリアソス、ピラントス、エクバソスが生まれた。
ピラントス(と)カルリロエーからアルゴス、アレストリデース、トリオパースが生まれた。彼(トリオパース)(と)(欠文)からエウリサベー、アントス、ペラスゴス、アゲーノールが生まれた。
トリパースとオレーアスからクサントスとイーナコスが、ペラスゴスからラーリッサが、イーナコスととアルゲイアからイーオーが生まれた。
ゼウスはイーオーを愛して犯し、ヘーレーにみつからないように彼女を牝牛の姿に変えた。これを知ったヘーレーは、体じゅうに輝く目をもっているアルゴスに見張り役としてイーオーのもとに送った。そのアルゴスを、ヘルメースはゼウスの命令で殺した。
P228だが、ヘーレーは恐ろしい化け物(2)を彼女のもとに送ったので、その恐怖に駆られたイーオーは海に身を投げざるを得なくなった。この海はイーオーの海(イオーニア海)といわれる。彼女はそこからスキュティアに泳ぎ着いたので、その辺りはボスポロス(3)(牝牛の渡し場)とよばれている。
イーオーはここからエジプトにおもむき、そこでエパポスを生んだ。ゼウスは自分の所業のためにイーオーがかくも多くの艱難に耐えたことを知り、彼女を本来の姿に戻してやり、エジプト人たちの女神にした。この女神はイーシスとよばれる(4)。
注(1)レートーに子沢山を自慢したために石に変えられたニオベー(参照)とは別人。アポロドーロスは彼女の母をニュンペーのテーレディケーとしている(ニ・一・一)。146 ペルセポネー
(2)具体的なものは記されていない。
(3)スキュティアはカスピ海の北に広がる地域、ボスポロスはプロポンティス(今のマルマラ海)と黒海をつなぐ海峡。このあたりの地理記述はおおざっぱである。
(4)イーオーの放浪をアポロドーロスはもっと詳しく述べている(ニ・一・三相互参照)。そこでアポロドーロスは、エジプト人がデーメーテールをイーシスとよび、ついでイーオーをも同じ名前でよんだといっている。
P229
(略)148 ヘーパイストス
P231 ヘーパイストスは、[妻]アプロディーテーが密かにアレースと情を通じているものの、自分が彼の武勇にかなわないのを知ると、計略をもってアレースをやりこめようとして、鋼鉄で鎖を作り寝台の回りにかけた。
密会の場所にきたアレースは、アプロディーテーとともに罠にかかり、逃れることができなかった。ヘーリオスの知らせでヘーパイストスがきてみると、二人は裸で横たわっていた。彼はすべての神々をよびあつめ、<……>神々はみた。
このため、アレースは羞恥心におそわれ、もう二度とこんなまねはするまいと思った。この情交から生まれたのがハルモニア(1)である。アテーナーとヘーパイストスは罪に染められた衣服を彼女に贈り物とし与え(2)、それがために彼らの子孫は不運につきまとわれている(3)。
一方、ヘーリオスの告発を恨んだアプロディーテーは、彼の子孫に対し常につらく当たった(4)。
注(1)のちにカドモスの妻となる女性。ヘーシオドス『人統記』九三七。アポロドーロス、三・四・二、他。
(2)アポロドーロスは、カドモスとの結婚の祝儀として、ヘーパイストスがハルモニアに与えたという説もある、と述べている(三・四・二相互参照)。なお、この服をこのように「罪に染められた」と表現し、ハルモニアが不義の果実であることを明言しているのは、訳者らの知るかぎりヒュギーヌス以外には見当たらない。
(3)「彼らの子孫」という表現は曖昧だが、事実はカドモス→ラブダコス→ラーイオス→オイディプース→エテオクレース・ポリュネイケースとつづくテーバイ王家の悲劇のことを指す。
(4)アプロディーテーとアレースの不始末の顛末は、パイアケス人の国へきたオデュッセウスを慰めるため、楽人デーモドコスが琴をかき鳴らしつつ語るものと同じ(『オデュッセイア』八・二六六以下)。
(略)P237/ 239/ 241/ 243
P245(略)
165 マルシュアース
アテーネーは初めて鹿の骨から笛を作り、神々の宴にいって奏でた、といわれる。ヘーレーとアプロディーテーは、灰色の目をして頬をふくらませているアテーネーをあざ笑った。演奏中にひどい形相となり、あざけられたアテーネーはイーデー山の森の泉におもむいた。そこで笛を吹き、水に映るわが姿を眺めてみて、嘲笑されるのも当然であることを知った。そのため、笛をその場に投げ捨てて、誰であれ笛を拾い上げた者はきびしい罰を受けよ、と呪った。
この笛をオイアグロスの息子、サテュロス[山野の精]のひとり、羊飼いのマルシュアースがみつけ、熱心に稽古して、日ごとにより甘美な音色を出すようになり、ついにアポローンに対し、
P246競技で竪琴を弾くよう挑戦するに至った。競技の場にアポローンがやってくると、彼らは学芸女神ムーサたちを審判にした。マルシュアースが勝利者として、いままさに立ち去ろうとしたとき、アポローンは竪琴を上下逆さまにして同じ旋律を奏でた。これはマルシュアースが笛でなし得ないところであった。かくして、アポローンは敗れたマルシュアースを木に縛りつけ、一人のスキュティア人に引き渡して、彼の手足の皮を引きはがさせた(1)。残った死体は、埋葬のため、[マルシュアースの]弟子のオリュンポス(2)に引き渡した。マルシュアース川は彼の血からその名を得ている。
注(1)以上の話はアポロドーロスも書いている(一・四・二相互参照)。ヘーロドトスは、マルシュアースはアポローンによって皮をはがれ宙吊りにされた、というプリュギアの伝説を記している(七・二六)。166 エリクトニオス(tw)
(2)アポロドーロスはこれをマルシュアースの父親としている(前掲箇所)。オウィディウスはこれをマルシュアースが愛していた少年とよんでいる(『変身物語』六・三八二~四〇〇相互参照)。
ヘーパイストスはゼウスと他の神々のために黄金と鋼鉄で椅子を作ったが、[彼の母親の]ヘーレーが座ると、彼女は突然空中に宙づりになった。縛った母親を解放するよう
P247 に、ヘーパイストスに遣いが送られたが、昔[母なるヘーレーによって]天上から突き落とされたことを怨んでいた彼は、自分に母はいない、といった(1)。ディオニューソスが彼を酔わせて神々のところに連れてくると、ヘーパイストスは子としての義務を否むことができなかった。
その際、彼が神々に懇望したものは何でも手に入れる権利をゼウスから与えられた。
そのため、アテーネーに敵意をもっていたポセイダーオーンは、アテーネーを妻に求めるようにヘーパイストスをけしかけた。これが聞き届けられ、ヘーパイストスが女神の寝室にやってくると、アテーネーはゼウスの忠告に従って自分の処女を武器によって守った。
彼らが格闘しているあいだに大地に落ちた彼の精液から男子が生まれた(2)。この男子の下半身は蛇の形をしていた。争いはギリシャ語でエリスといわれ、大地はクトーンといわれるので、人びとはこの子をエリクトニオスと名づけた(3)。
アテーネーはひそかにこの子を養育しようと、小籠に入れて、ケクロプス[アテーナイの初代王]の娘たちであるアグラウロス、パンドロソス、ヘルセーに託した(オウィディウス『変身物語(上)』相互参照)。彼女たちが小籠を開けたとき、烏がその秘密を漏らした。彼女たちはアテーネーのために狂を発して、海中にわが身を投げた(4)。
注(1)ヘーレーは、ゼウスの胤を使わず自分ひとりで生んだ息子ヘーパイストスの醜い姿を恥じて、彼を高い天から突き落とした。これを海中でテティスが助けかくまった。『イリアス』一八・三九五~三九八。『ホメーロス賛歌』「アポローン篇」三一六~三二〇。』167 ディオニューソス
P248(2)アポロドーロスも同じ話を伝えている(三・一四・六相互参照)。
(3)「土から生まれたエリクトニオス」のことはエウリーピデースが述べている(『イオーン』二〇~二二)。
(4)アポロドーロスは、彼女らは大蛇に食い殺された、あるいはアテーネーの怒り故に精神に錯乱をきたし、アクロポリスから投身したといっている(前掲箇所)。
(略)P249
(略)P261
(略)176 リュカーオーン
ゼウスはペラスゴス[アルカディアの原祖]の息子リュカーオーンのもとに客となったが、彼の娘カリストーを犯したといわれる。この交わりから生まれたアルカスはわが名をその地[アルカディア]に与えた(1)。され、リュカーオーンの[五十人の]息子たちはゼウスが神であるあるのかどうか疑い、彼をためそうとした(2)。彼らは人肉をほかの肉と混ぜ、
P262祝宴で彼に供した。これを知ったゼウスは怒って食卓をひっくり返し、リュカーオーンの息子たちを雷霆でうち殺した(3)。のちにアルカスはこの地のトラペズースとよばれる町を建設した[ギリシャ語で食卓はトラペザ]。
ゼウスは父のリュカーオーンを狼[ギリシャ語で狼はリュコス]の姿に変えた(4)。
注(1)アポロドーロス、三・八・二。177 カリストー(tw)
(2)オウィディウスはリュカーオーン自身がこれを試したとする(『変身物語』一・二一・六以下)。
(3)アポロドーロスは、ゼウスは、一番下の息子ニュクティーモスを除いて、リュカーオーンとその息子たちを雷で殺したという(三・八・一相互参照)。
(4)これは人名、地名の由来をきわめてわかりやすい形で(当否は別にして)語る典型的な物語
リュカーオーンの娘カリストーはゼウスと褥をともにしたために、ヘーレーの怒りによって熊に変えられたといわれる(1)。のちにゼウスは彼女を星座の列に加えた(2)。これは北斗七星[大熊座]といわれる。この星座はその位置を変えず、また沈むこともない。
というのは、オーケアノスの妻にしてヘーレーの乳母であるテーテュースが、星座が
P263 大洋に沈むのを禁じているからである。それでこれが大熊座である。これについてクレータの詩に次のようにうたわれている。
そして汝(3)は姿を変えられたリュカーオニアのニュンペー[カリストー]から生まれた。それで大熊座はギリシャ人からヘーリケー[螺旋、渦巻き]とよばれた。この星座は頭にあまり明るくない七つの星、両耳に二つ、肩には一つ、胸には明るい一つ、前足には一つ、尻には明るい一つ、後ろの太股には二つ、後足の端には二つ、尾には三つの、すべて合わせて二十の星をもっている。
彼女は氷のようなアルカディアの頂から奪われたのだが、
テーテュースは常に彼女が大洋に身を浸すことを禁じている、
それはかつて彼女が、女神の養い子[ヘーレー]の妻の座を奪おうとしたからである。
注(1)ゼウスとカリストーの情交、その結果をオウィディウスが詳述している(『変身物語』二・四〇一~四九五相互参照)。178 エウローペー
(2)アポロドーロス、三・八・二相互参照。
(3)グラントによれば、この「汝」はカリストーの倅アルカスのこと。
(略)P265セメレー/ 267アルテミス
(略)P281(略)
191 ミダース王
ミュグドーニア(1)王ミダースは母なる女神(2)の息子であり、アポローンがマルシュアース(3)あるいはパーンと笛の技を競ったとき、トモーロスによって[審判に]選ばれた。トモーロスが勝利をアポローンに与えたとき、ミダースはむしろマルシュアースに与えられるべきだといった。そのため、腹を立てたアポローンはミダースに向かっい「審判したときにもっていた心にふさわしい耳を、汝はもつことであろう」といった。この言葉が発せられるや否や、彼はロバの耳をもつことにななった(4)。
そのころ、ディオニューソスが軍隊を率いてインドに行った(131話)とき、はぐれたシーレーノス(5)をミダースは大いに歓待し、彼に案内者をつけてディオニューソス一行のもとに送り届けた。
P283 これに感動したディオニューソスは、望む物を何でも自分に求めて良いという特権をミダースに与えた。ミダースは触れた物がすべて黄金になるように神に願った。この願いが認められ、彼が王宮に戻ると、触れた物はすべて黄金になった。しかし、今度は飢えに苦しむようになった(6)ので、ミダースはディオニューソスに、この特別な贈り物を取り去るように懇願した。ディオニューソスは彼にパクトーロス川で体を洗えと命じた。彼の体が水に触れると、水は金色になった。このリューディアの川は、今はクリューソルロアース[黄金が流れる川]とよばれている。
注(1)古代地図では三地方に見られる地名だが、ここではプリュキアの一地方らしい。ミダースはふつうプリュキア王といわれる。192 ヒュアース
(2)大地母神キュベレーのこと(274話)。ミダース王の父親はヘーロドトスがゴルディアスとよんでいる(八・一三八)。
(3)これは前出のマルシュアースのことらしい(参照)。
(4)ミダースのロバの耳についてはオウィディウスが詳述している(『変身物語』一一・八五~一四五)。
(5)年老いたサテュロスの一人。年老いたサテュロスは一般にシーレーノスとよばれた。
(6)オウィディウスの記述、「手でパンに触れると、固くなっている。がつがつと、料理を歯で噛み砕こうとすると、歯の当たった食べ物を、まばゆい金箔が蔽うのだ。葡萄酒を、水で割る。と、見れば、溶けた黄金が口へ流れ込んでいる」(『変身物語』一一・一二一~一二六、中村善也訳)
アートラース[巨人]はプレーイオネーとのあいだに、あるいはオーケアノスの娘とのあいだに、十二人の娘と息子ヒュアースをもうけた。ヒュアースは猪またはライオンに殺され、姉妹たちはこれを嘆き悲しみ、悲嘆のあまり世を去った。
娘たちのうち、最初の五人が星の世界に送り出され、牡牛座の二つの角の間に位置を占めている。これらはパイシュレー、アンブロシア、コローニス、エウドーラ、ポリュクソーである。
彼女たちは兄弟の名によりヒュアデスとよばれる。ラテン語ではスクエラと称される。ある者たちは、彼女たちがY[ユープシーロン]の文字の形に配置されているので、そうよばれる(1)のだという。
また、彼女たちが天に現われるとき雨をもたらすので、そうよばれるのだという者もいる(雨が降るのはギリシャ語でヒュエインというからである)。彼女たちが星座に加えられたのは、彼女たちがディオニューソスの乳母だったからだ、と考える者もいる。
彼女らはリュクールゴズによってナクソス島から追い出されていた(2)。
のちに、他の姉妹たちは悲しみのために死んで星座になった。多数なので、彼女たちはプレイアデスといわれる。そうよばれるのは、彼女たちがつながり合っていたからであると考える者もある。
つながり合っている状態を[ギリシャ語で]プレーシオンというので、
P285 そのうえ、彼女たちはきわめて近接しているので、一つ一つ分けて数えることがほとんどできず、また、六つなのか七つなのか、誰の目にも確かでない。
彼女たちの名前は次のとおりである。エーレクトレー、アルキュオネー、ケライノー、メロペー、ステロペー、ターユケテー、マイア、このうち、エーレクトレーは、ダルダノス[エーレクトレーの息子]が死に、さらにトロイアが、ギリシャ軍に奪われたため、姿を見せないのだといわれる(3)。
他の姉妹が神々を夫にしているのに、メロペーは人間の男(4)と結婚したので、顔を赤らめているいるようにみえると考える人びとがいる。そのため、彼女は姉妹たちの歌舞隊から追い払われ、悲しみ髪を乱している。
彼女はほうき星とよばれたり、あるいは、長々と横たわるのでロンゴデス[語形不明]、あるいは剣の切っ先の加形をしているのでクシヒアース[剣の形をした、という意味のことば]といわれたりする。また、この星は悲嘆の前兆でもある。
注(1)ギリシャ語のYはふつう帯気音で「ヒュ」と発音されるからか?P287
(2)このくだりは意味不明。リュクールゴズはトラーケーの王であり、ナクソス島との関連が分からない。原文が継ぎはぎされた結果だろう。
(3)クイントゥスはエーレクトレーが姿をみせないのは、トロイア陥落の悲運を嘆くほかに、プリアモスの娘ラーオディケーの死を悼んでとも付け加えている(一三・五四四以下)。
(4)冥府で業罰に苦しんでいるシーシュポスのこと
P289
195 オーリーオーン(ブルフィンチ『ギリシャ・ローマ神話』相互参照、アポロドーロス『ギリシア神話』相互参照)
ゼウス、ポセイドーン、ヘルメースはトラーケーのヒュリエウス王(1)のもとに客となった。神々は彼から惜しみない歓待を受けたので、彼に望む物があれば何でも与えようと約束した。
王は子供たちを望んだ。ヘルメースは、ヒュリエウスが神々自身のために犠牲に供した牝牛から、皮をはぎ取ってきた。神々はその中に放尿し、それを大地に埋めると、そこからオーリーオーンが生まれた。
彼はアルテミスを犯そうとしたので(2)、彼女によって殺された。のち、ゼウスにより星の列に加えられた。人々はこの星をオーリーオーンとよぶ。
注(1)オウィディウスは貧しい老人といっている(『祭暦』五・四九三~五四四)。196 パーン
(2)オウィディウスは、彼がアルテミスに不遜なことをいったから、としている(同所)。
エジプトで、神々(1)が、怪物テューポーン[ガイアとタルタロスの子]を恐れているので、パーン[牧神]はより容易にテューポーンを欺くため、神々に野獣の姿に変身するよう命じた。
のちにゼウスはテューポーンを雷霆で殺した。神々はパーンの忠告によってテューポーンの暴力から逃れることができたので、パーンは彼らの意志により星の列に加えられた。当時パーンは山羊の姿に変身していたので、[この星はギリシャ語で]山羊座(アイゴケロース)とよばれた。これを我々[ローマ人]は山羊座(カプリコヌス)といっている。
注(1)アポロドーロスによれば、これはオリュンポスからエジプトへ逃げたギリシャの神々(一・六・三)。なおアポロドーロスの『ギリシア神話』では、パーンはアイギパーン(山羊の蹄をもつパーン)とよばれている。197 アプロディーテー
(略)P291
(略)P295
(略)202 コローニス
プレギュアース[オルコメノスの王]の娘コローニスを身ごもらせると、アポローンは誰
P296かが彼女を犯さないように、烏を護衛として与えた。彼女はエラトスの息子イスキュスと閨ねやをともにした。そのためにイスキュスはゼウスにより雷霆で殺された。アポローンはみごもったコローニスを叩き殺した。彼は彼女の子宮から取り出したアスクレーピオス[医神]を養育し(1)、見張り役だった烏の色を白から黒に変えた(2)。
注(1)アポローンは死んだ女の体内から取り出した子供をケイローン(半人半馬の賢人)のもとへはこんだともいわれる(『変身物語』二・五四二~六三二相互参照)。203 ダプネー
(2)アスクレーピオスの母はコローニスまたはアルシノエーの二説があったことをアポロドーロスが伝えている(三・一〇・三相互参照)。
(略)P297
204 ニュクティメネー
レスポスの王エポーペウスの娘ニュクティメネーは、類なく美しい処女であったといわれる。父エポーペウスは情欲に駆られて彼女を犯した。彼女は恥じ入って森に身を隠した。アテーネーは彼女を哀れんで梟に変えた(tw)。この鳥は恥のため、昼の光の中に出てこないで、夜、姿を現わす(1)。
注(1)ニュクティメネーの話はオウィディウスも書いている(『変身物語』二・五八九~五九五相互参照)。205 アルゲー(略)
206 ハルパリュケー(略)
207-218 欠落
219 アルケラーオス(略)
P311(略)
242 自殺した者たち(略)
P313(略)
243 自殺した女たち(略)
P317(略)
244 親族を殺した男たち(略)
P319(略)
245 舅や婿を殺した者たち(略)
P321(略)
246 わが子の肉を祝宴で食べた男たち(略)
247 犬に食い殺された男たち(略)
248 猪に突かれて死んだ男たち(略)
249 破滅の松明(略)
P323(略)
250 御者を死なせた四頭立て馬車(略)
P325(略)
251 運命女神たちの許しを得て冥界からもどった者たち
デーメーテールは娘ペルセポネーを捜しまわった(146話)
ディオニューソスは、カドモスの娘である母セメレーを捜して(冥府に)に降りた(1)。
ゼウスの息子ヘーラクレースは、(冥府の番)犬ケルペロスを地上へ引き出すために(30話)。
アポローンとコローニスの息子アスクレーピオス(2)。
ゼウスとレーダの息子たちカストールとポリュデウケースは、交互の死によって(交代で)地上に戻った(80話)。 イーピクロスの息子プローテシラーオスは、アカストスの娘ラーオダメイアのために(103話)。
ぺりアースの娘アルケースティスは、夫アドメートスのために(51話)。
アイゲウスの息子テーセウスは、ペイリトオスのために(3)。
テーセウスの息子ヒッポリュトスは、アルテミスの意志によって。彼はのちにウィルビウスとよばれた(4)。
P326オイアグロスの息子オルペウスは、妻エウリュディケーのために(5)。
キニュラースとスミュルナの息子アドーニスは、アプロディーテーの意志によって(6)。
ミーノースの息子グラウコスは、コイラノスの息子ポリュエイドスによってよみがえった(136話)。
ラーエルテースの息子オデュッセウスは、祖国のために(7)。
アンキーセースの息子アイネイアースは、父親のために(8)。
マイアの息子ヘルメースは、しょっちゅうそこへ旅をした(9)。
注(1)アポロドーロス、三・五・三。パウサニアース、二・三一・二。252 野獣の乳で育てられた者たち(略)
(2)医神アスクレーピオスはゼウスの雷で打たれて死んだあと、星(神)になった。地上によみがえったわけではない。
(3)テーセウスは友人ペイリトオスの嫁さらいに協力して冥府に降り、許されて地上へも戻った、ということらしい。79話ではヘーラクレースの尽力で二人とも無事地上に戻ったとされている。ふつうはペイリトオスは永劫に冥府にいるものとされる。
(4)49話では、(グラウコスとともに)アスクレーピオスによってよみがえったとなっている。故国を追われコリントス近傍で死んだヒッポリュトスが、イタリアでよみがえりウィルビウスとなった経緯はオウィディウスが語っている(『変身物語』一五・四九二~五四六相互参照)。
P327 (5)蛇に噛まれて死んだ妻エウリュディケーを取り戻すべくオルペウスは黄泉の国へ降りたが、ハーデースとの約束を破って、地上に達する直前に振り返ったため、再びエウリュディケーを失った。オウィディウス『変身物語』一〇・一~六三。ウェルギリウス『ゲオルギガ』四・四五三~五〇六。
(6)オウィディウスはアドーニスの死を語っているが、その再生については無言(『変身物語』一〇・二九八以下)。これはプロペルティウスの作品でも同じ(『エレーギア』二・五三~五六)。
(7)『オデュッセイア』第一一巻で詳述されている。
(8)ウェルギリウス『アエネーイス』第六巻で詳述されている。
(9)死者を冥府に導くのはヘルメースの役割の一つ。
253 背徳の交わりをした者たち(略)
P329(略)
254 この上なく肉親に忠実な者たち(略)